ラジオ体操


町田 雅之

 もともと体を動かすのは得意なほうではないが、ここ数年、夏休みには我が子につきあって近所の子どもたちと一緒に早朝のラジオ体操をすることもある。ラジオ体操のどこが運動になるんだ、とお思いの若い人は少なくないはずであるが、この年齢の、このたるみきった体で、第一、第二の体操を続けて、しかも確実にやるというのは間違いなく運動である。
 それにしてもつい気になってしまうのは、子どもたちのラジオ体操の動作だ。
名前はたしかに「体操」だが、彼等にはたぶんそういう意識は無い。一応それらしく振りをなぞるだけの体操は、彼等の普段の運動量にくらべれば、たしかにそれほど運動になるとは思えないし、そのひとつひとつを運動としてきちんと子どもたち全員に納得させることは、たとえば我が子だけ教えるにしても、ちょっとした時間と根気は必要だろう。
 あるテレビ番組で芸能人の「常識」を問う企画として、ラジオ体操が課題とされたのを見たが、左と右の順番で迷うくらいはマシなほうだ。いまどきの子どもたちにとって、テレビで見るタレントたちの振り付けを正確に再現できるかどうかというのは、おそらく仲間うちの評価に大きな影響があるのではないだろうか。それにくらべてラジオ体操は、なんとなくきちんとやらないほうがかっこいいの、と言われそうな彼等の動きである。
 毎朝6時30分のNHKのラジオ放送の冒頭には今も「ラジオ体操の歌」が歌われている。あまり知られていないことだが、この歌の作詞は平戸市出身の詩人藤浦洸である。平戸市では、この9月1日に氏の生誕100周年となることを記念し、氏が初代の後援会長であったダークダックスとともに約400名の市民が氏の作品を歌うコンサートを行い、氏の功績を顕彰する一年の幕を開ける。

1998.8.29掲載

                                  

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