これは「えんぶ」に掲載されたものではありません。
1997年の春、次女の中学入学式で
保護者代表挨拶の役がまわってまいりました。
この年頃をめぐる社会の状態が激動しているのを見て、
こちらへの掲載を思いつきました。

         ごあいさつ

       

 春うららかなこの日、このように盛大かつ厳粛な入学式を行っていただきましたことに対し、百四十四名の生徒の保護者を代表して、心よりお礼申し上げます。

 また、多くの先輩方もいらっしゃる中、不肖私に保護者代表の挨拶という大役がまわってまいりました。行き届きませんが、あくまでも保護者の一人としての気持ちを述べさせていただきます。

 わが子の入学という節目を迎えるに当たり、私自身が、当時新築間もないこの体育館で、入学式を経験したことを、思い出しております。自分自身が中学生であった時、父親の死という個人的な出来事もありましたが、自らの成長の中で、先生方をそれぞれ一人の人間として認識するようになった時期であり、その後の私の生き方を決める大きな影響力を持つ何人かの先生と出会ったのも、この中学生の時であったことを思い出します。まさしく一人の大人となっていく過程での、いしずえの時期であったと思い返しております。

 あの当時より今日に至るまで、社会や私たちの暮らしぶりは大きな変化をとげてまいりました。振り返ると、この社会は、直接にせよ間接にせよ、間違いなく、私たちが望んだように変化してきたと感じずにいられません。結果として、いくつもの社会的な問題が生じていることも事実であります。そして、それらの原因の一つ一つを追究していけば、私たち自身の生き方や考え方と決して無縁では無かったと思うのです。そしてそういった考え方の多くは私たちが親の世代から受け継いだものでもありました。

 高度成長といわれた時代が終わり、成熟した現代社会では、個人が自分の生き方を自分で決めていく能力が一層求められています。地域社会にあっても、自治ということがあらためて問われています。

 本日入学を許された子どもたちが将来社会人となり、親となり、私たちの世代になったとき、どのような社会が築かれているか。そこにはここで学ぶ3年間が、はかりしれない影響力を持つことでしょう。そしてその方向付けの元となる考え方が正しく形づくられるためには学校や先生方のみならず、私たち保護者に大きな責任があることを、あらためて認識致しております。来るべき社会のために、親である私たち自身が、正しい社会観を持ち、様々な意味で、社会のあるべき姿を正しくわが子に伝えなければいけないということを、あらためて肝に銘じているところでございます。

 また、わが子のしなやかでのびやかなあらゆる可能性を信じることは、親に許された大きな喜びのひとつであります。学校、地域、家庭、それぞれの役割が大きく問い直されている現在、そのどれもが、わが子の可能性のために正しく十分に機能することを願い、そのためのあらゆる努力を惜しんではならないという親としての覚悟をあらたにして、ご挨拶と致します。

平成九年四月八日
          平戸市立平戸中学校 新入生保護者代表 町田 雅之
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